2020年07月27日

自筆証書遺言書保管制度を利用してみて(1)― 理由など

法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用してみて考えたこと感じたことを簡単ではありますが、書いておきたいと思います。

そもそも、保管制度を利用しようと考えた理由ですが、
  1. 話の種
  2. 兄弟姉妹相続対策
の2つがあげられます。

行政書士という仕事柄、遺言書について訊かれることがままあります。であれば、まだ始まったばかりの保管制度を自ら利用してみるのは間違いなく話の種になります。

次に、兄弟姉妹相続対策です。将来私が死亡したら法定相続人は兄弟姉妹になるはずです。兄弟姉妹(または甥姪)に自分の遺産が相続されることの評価は人それぞれあると思います。積極的に相続させたい人から断固拒否の人まで。

私の場合、そのあたりに特段拘りはないのですが、一番危惧しているのが、不動産はともかく金融資産を中心とした動産の存在が分からず相続人が困る(苦労する)ことです。

ペーパレス化が進む現在、預貯金はもとより借入金や株式などの証券類も電子記録しかないことも珍しくありません。半年から1年に1回程度の割合で報告書が送られてくることが多いのも事実ですが、同居しているならともかく普段は別に暮らしている兄弟姉妹がそのことに気がつかないおそれは十分あります。

もちろん、普段から自分の資産について伝えておくという手もありますが、多くの人にとっては気の進まない対策でしょう。もちろん、私にとっても。

以上を踏まえてとき法務局における自筆証書遺言書保管制度が解決策になるのでは考えたのが保管制度を利用してみようと思った理由です。
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posted by 涌井史明 at 11:19| 遺言相続

2020年07月25日

法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まります(7)


前回までで一通り申請書に記入する内容を説明しましたが、もう一度振り返ってみます。

  • 申請書1枚目「遺言者欄」
  1. 申請年月日
  2. 遺言書保管所(法務局)の名称
     ※本局の場合、支局・出張所は空欄
  3. 遺言書の作成年月日
  4. 遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍・筆頭者(外国人の場合は国名・地域)、電話番号
  • 申請書2枚目「遺言者本人の確認・記入等欄」
  1. 不動産の所在地(不動産の所在地を管轄する法務局で保管を希望する場合)
  2. 遺言書が申請者自身のものであることのチェック欄
  3. 遺言書の保管番号(既に他の遺言書が保管されている場合)
  4. 遺言者の署名or記名押印
  5. 備考欄(必要に応じて)
  6. 遺言書の総ページ数(目録含む)
  • 申請書3枚目「受遺者等・遺言執行者等欄」
  1. 通し番号
  2. 受遺者・遺言執行者の別(両方に該当する場合もあり)
  3. 受遺者・遺言執行者の氏名・名称、住所・所在地、生年月日(自然人)、会社法人等番号(法人)
  • 申請書4枚目「死亡時の通知の対象車欄」(1または2の一方のみ)
  1. 受遺者・遺言執行者の番号
  2. 推定相続人に関する情報(続柄、氏名、住所)
  • 手数料納付用紙
  1. 申請する法務局名
     ※本局の場合、支局・出張所は空欄
  2. 申請者の住所氏名
  3. 納付金額
  4. 納付金額分の収入印紙
上記以外に、申請書自体のページ数(「1/5」や「2/6」など「当該ページ数/総ページ数」で表記)を記入します。


posted by 涌井史明 at 00:05| 遺言相続

2020年07月24日

法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まります(6)


受遺者と遺言執行者を記入したら通し番号を書きます。1人しかいなくても必ず記入します。

インターネットで配布されいている遺言書の保管申請書には2人分の記入欄が用意されています。3人以上いる場合は、別途配布されている継続用紙を用いて必要な人数分の情報と通し番号を記入します。

引き続いて死亡時の通知対象者を記入します。実はこの「死亡時の通知」はまだ運用されていません。令和3年度以降のに本格運用予定とのことです。

遺言者が死亡したことを法務局(遺言保管官)が知った場合、ここに記載した受遺者・遺言執行者または推定相続人(遺言者が死亡すると法定相続人になる人)に遺言書が保管されいてることを通知してくれます。

ここで注意が必要なのは通知対象になるのは1人だけだということです。つまり、受遺者・遺言執行者から1人、推定相続人から1人の合計2人を通知対象者とすることはできません

受遺者・遺言執行者は既に他の用紙に記入しているのでそれぞれに割り振った通し番号を記入するだけです。

推定相続人の場合は遺言者との続柄とともに氏名と住所を記入します。推定相続人の
続柄は限定されていて、列挙されている、配偶者、子、父母、兄弟姉妹以外では祖父母(曾祖父母…)、孫(曾孫…)、甥姪などです。ただし、父母や子、兄弟姉妹が生きていれば祖父母、孫、甥姪は推定相続人ではありません。

この死亡時の通知は、法務局における自筆証書遺言書保管制度の中でも特に画期的な仕組みだと思います。遺言書の王様とも言える公正証書遺言書も、公証役場で検索しなければ存在そのものが埋もれて無意味になります。

一方、自筆証書遺言書保管制度における死亡時の通知は、遺言者の死亡により指定された者に対して「遺言書が保管されてますよ!!」と自動的に通知してくれる仕組みです。

法律制定時の国会答弁(衆院法務委員会)を読むと、現在システムの改修中のはずなので1日も早く死亡時の通知が本格運用されることに期待しています。

■記入例1(受遺者・遺言執行者のうち通し番号3番の者を通知対象者にした場合)
死亡時の通知の対象者欄.jpg

■記入例2(推定相続人である姪を通知対象者にした場合)
死亡時の通知の対象者欄(推定相続人).jpg
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posted by 涌井史明 at 00:11| 遺言相続