「自筆証書遺言書保管制度を利用してみて(3)― 遺言書とは何か@」の続きです。
今回、私の書いた遺言書は特定の個人を確定的に保険金受取人に指定したものではなく、遺言書に記した候補者の中から条件に当てはまる者が受取人になるというものです。
遺言書を書いた時点では保険金受取人が確定していない記述の仕方でも保険会社は認めるか、不明確であると拒否しないかというのが私の確認したかったことです。
そのことを何度も何度も説明しても、コールセンターの担当者は「遺言者と相続人との間の(内輪の)話なので…」みたいなことを繰り返すばかりでらちがあきませんでした。
結局、上記の保険法(保険法44@)の説明をして、遺言書で保険金受取人を指定することはできるし、遺言書は法律文書かつ遺言者の意思であって、遺言者と相続人間の内輪の話ではないことを理解してもらいました。
その上で、@私の加入している保険契約が遺言書よって保険金受取人を指定できるものであるか、A条件分岐するような保険金受取人の指定であっても保険会社が受け入れるか否かを尋ねました。
結果、@に関してはOKで、Aに関してはその時の状況もあるので現時点で確定的に返答はできないが少なくとも内容を審査せずに拒否することはないという回答を得ました。
前回も強調しましたが、遺言書は法律文書であり、遺言者の意思を記したものです。
ですから、民法891に相続人となることができない者として「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」が挙げられていますし、同時に刑法159の有印私文書偽造罪(3月以上5年以下の懲役)や、同258の私用文書等毀棄罪(5年以下の懲役)などが適用され、遺言書が法律的に保護されています。
また、裁判所で検認を受けた自筆証書遺言で預貯金の払い戻しや名義変更などができることからしても、遺言書が法律文書であり遺言者と相続人との間の内輪の話ではないことは明らかです。
なぜ保険会社のコールセンター担当者がそのことを理解していなかったのか不明ですが、遺言書の作成に際しては入念な下調べや確実な知識が欠かせないという教訓を得ました。
遺言書は遺言者の死亡によって有効になる法律文書で、遺言者の意思を実現する最後の機会なので不備があると取り返しがつきません。
その点からすると、法律のプロ中のプロである公証人に作成してもらうのが一番ですが、公正証書遺言にもデメリット(費用など)や短所(通知制度がない)もあるので、法務局における自筆証書遺言書保管制度を併用するのが良いのではないかと考えています。