「自筆証書遺言書保管制度を利用してみて(1)― 理由など」の続きです。
まずはデメリット。
- お金と時間が掛かる
- 本人出頭の義務がある
- 遺言書を見られるのが多少恥ずかしい
手数料3,900円と手続に30〜40分の時間や、法務局へ自分で出向く手間が掛かります。
また、外形的なチェックのためとはいえ、遺言書本文や財産目録などを係の人に見られるのが多少恥ずかしくはあります。
特に、訂正箇所があると、訂正が正しく行われているか(場所、字数、署名、押印など)のチェックが入るので、結果として本文を長時間見られることになります。
しかし、以上のデメリットはメリットに比べればとても小さいことだと思います。
次にメリット。
- 火災・天災・盗難・改ざん・紛失に強い
- 死亡時の通知制度を使えば遺言書の存在が分かる
- 検認不要なので遺言書の執行がスムーズ
- 遺言書を書くモチベーションが湧く
まだまだ列挙できますが、キリがないのでこれくらいにしておきます。
1の「火災・天災・盗難・改ざん・紛失に強い」は法務局という公的機関に預けることによりしっかりとガードされますし、少なくとも、対策されていない一般住宅より安全であることは間違いないでしょう。
2の「死亡時の通知制度を使えば遺言書の存在が分かる」ですが、実はこれが最大のメリットだと思っています。遺言書の王様である公正証書遺言書の最大の弱点は、遺言者の死亡時に自動的に通知してくれる仕組みがないことです。極めて強力な公正証書遺言書であっても、その存在が埋もれてしまえば意味を失います。惜しむらくは、本格運用は来年度(令和3年度)以降ということです。
3の「検認不要なので遺言書の執行がスムーズ」も、遺言書の内容によっては大きなメリットになるでしょう。密封された遺言書は家庭裁判所での検認を経ないで開封することは禁じられています。現状、検認まで2か月ほど掛かることを考えると、葬儀などに関する指示が遺言書に書かれていても実行は困難でしょう。
また、熟慮期間が3か月であることを考えると検認までの2か月は決して短い期間ではありません。もちろん、熟慮期間の延長はできますが、遺言者の死亡で慌ただしい中では何が起こるか分かりませんので余計な手続は減らしておきたいところです。
4の「遺言書を書くモチベーションが湧く」ですが、何事も締切のないことに関しては腰が重くなるものです。保管制度の利用にはあらかじめ申請の期日を予約しておく必要があります。これが一種の締切です。締切があると結構頑張れます。
その際も、法務局に預ける遺言書に全てを書く必要はない(※)ので、最低限のことを書いて預けておくのも一つの手だと思います。
(※)この点についてには他の記事で書きます。